Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
「どちらへ帰ります」
「私? 今日は動坂」
「ではお茶でも飲んでお別れしようか」
彼らは、ある家族的喫茶店へ入った。阪部はいつも話好きだが、その日は特に話題が尽きなかった。彼がいつか書きたいと思っている、さっきの植物学のような本のこと、今度の南洋旅行で、附属的な収穫としたいある人類学上の興味ある計画について。伸子が阪部と話していつも面白いと思うのは、彼が一種綜合的な天質を発露させて植物学に携わっている点であった。彼が変形菌のことを話せば、必ずそれはどこかで今日の生きている人間の社会生活と関係を持つ結論に達した。顕微鏡的報告に終らなかった。そこに彼の話の活々さと魅力があった。喋っているうちに、ぱっと、店内の電燈がついた。大理石のテーブルや、鏡をはめこんだ柱が、俄に夜の銀座らしく輝き出した。
「――さあ、そろそろ動き出しましょうか」
「ああ大分今日はしゃべりましたね」
阪部は時計を見た。
「何時? 四時すぎたでしょう」
「二十分です」
彼は勘定をしながら、考えていたが、
「どうです、どうせ食べなければならんものだから、夕飯を近所ですませませんか」
伸子は、
「そうね」