Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
「――いつも食べるばっかりに来たって何にもなりゃしない!」
伸子はやっと堪えた。憎悪と涙が心に溢れた。彼が反感から、――伸子が佃より弟をちやほやすることに対する反感か、或は和一郎の気がねをしない親しさを曲解した反感からか、わざと部屋部屋を引きちらかし、和一郎と彼女に落着く場所も失わせるのだと感じずにいられないようになった。和一郎までなぜそのように扱わなければならないのか。佃の背中を睨みつけ立っていると、やや荒々しい跫音で和一郎が八畳から出て来た。
「僕帰る」
伸子は、喉がつまったようで返事が出なかった。
「…………」
「飯なんぞいるもんか!」
和一郎は帽子かけから帽子をとってかぶり、靴をはき始めた。伸子の前には和一郎がこごんでいる。直ぐ左の柱はずれに、踏台に踏みひろがった、佃の二本の脚が見えた。伸子は、どうしてくれる、といきなりその脚を払って引っくりかえしてやりたい激情を覚えた。靴をはき終り、和一郎は伸子を見て、
「左様なら」
と云った。もうそれは七時近くであった。実に堪え難く、彼女はやっと云った。
「またね、じゃあ。――御免なさい」
格子が彼の後にしまると、伸子は涙が出て仕方なかった。