Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
和一郎がもしか金を持っていなかったらと思うと伸子はなお堪らない心持になった。彼女は踏台から佃を無理やり引きずり下した。彼女は熱し云い争った。佃はそうなると、例によって、
「そんな気じゃあなかった」
の一手で伸子が疲れきるまで己を守った。
――その時のことを後から思い出すと、伸子は佃の心の寂しさ、自分の寥しさが心に迫るのを感じた。伸子は自分の悲しみや、怒りが間違いであったとは思わなかった。ただ自分の気持の一重底に流れているもの、それが寥しい。それは、いつの間にか自分には夫の佃より、再び血族の父や弟の方が可愛く大切になっているという、新たな自覚であった。
四年前、彼らの恋愛の初め、結婚しようとする時、どんなに自分が両親その他に反抗したか追懐がはっきり伸子の心に浮んだ。彼女はその頃、血に伝わるいろいろな伝統に形と精神とで反抗し、自分だけは別種な、もっと自由な、もっと確乎とした生存になりたいという大望を抱いていた。だんだん結婚という接木が不成功であることの証明された今、また自ら血が血をよんで自分は血族のうちに牽きつけられようとするのであろうか。本能の不思議な力。