Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

食物ばかり売る店が続いていた。「一寸一杯酒肴アリ」立看板がある。汁粉雑煮、ワンタン屋、汚水を流す溝や不完全な炊事場から蒸れ臭い不健全な臭気が、ほこりで白っぽくなった春の並木道に漂っていた。伸子がよく子供の時分、大きなリボンをつけて遊びに来た瓢箪池のわきに出た。葉の青々した篠懸の下に池に向って空いたベンチが一つあった。いい加減歩いた彼女らはそこにかけた。

「もう傘なしじゃ無理だなあ、あついでしょう」

素子は持っていた雑誌で扇を使うようにした。

「でもいい気持だわ、――鴨がまるで愉快そうよ、御覧なさい」

バラックがあるせいか、日曜でもないのにあたりは割合人出であった。青菜色の労働服や法被姿の男が多かった。彼らは煙草を吸ったり、新聞を見たりしながら、池の周囲のベンチ、鉄柵の上なぞに休んでいる。地震の時、水禽をあさって食べてしまったという話の池には、今日水がなみなみと漣立っていた。キラキラ日光が揺れる。水面に二羽の鴨が盛に游泳していた。彼らは時々、急に卵色のみずかきが見えるほど伸び上って威勢よく羽搏きした。水がバシャバシャ散る。水のしぶきの上に、瞬間低い小さい虹がぼんやり立った。