Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
七
彼女は椅子をずらせ、紙屑籠の真上から、ぱらぱらぱらぱらとその白い紙片をすて、庭へ出た。大きい月のまわりに更に大きい暈がかかって、芝は湿っぽい夜の匂いを漂わせていた。遠くの隅の黒く見える這松の傍から、湯を貰って帰る婆さんの姿が現れた。
「ええ月だなし」
「…………」
「――おやすみなんしょ」
「おやすみなさい」
伸子が無愛想にしていると、横を通りすがりながら、古い雌象のようなその婆さんは、わざとらしく瞼を細め、
「ええ謡があることよしか、遠くはなれて会いたい時は、月が鏡になればよい」
彼女は、濡れた手拭をまるめて持った手で、伸子にちょっかいを出すようなばかげた恰好をした。
七
伸子の楽しみは、素子からの手紙であった。田舎へ立つ前、伸子の必要から、一緒に鎌倉へ行った。活動写真を見て置く要があった。それも素子がつきあった。共に暮しているのが祖母では、鍋釜の話しかできず、そうでない話対手のように往復していた手紙が、伸子にとってだんだん生活上必要なものとなって来た。時々胸いっぱいになるいろいろな感情や考えを、佃とのことにつき、また他のことにつき伸子は前後かまわず、大きい紙や小さい紙に書きつけて素子に送った。