Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
東京へ行きたい……。彼女は歩き出した。東京へ行きたい……。行きたい。行きたい。テムポが次第に速くなり、伸子はだんだん矢も楯も堪らなくなって来た。素子が帰る時、伸子は成ろうことなら一緒に行きたいくらいであった。彼女はそれを、佃に対して自分がちゃんと立場も明かにしていないのを考えて堪えた。今、とにかく一段落ついた。東京へ二三日行っても一ヵ月の忍耐が無駄になることはあるまい。――伸子は、素子が今忙しい時ではないかと、日を繰って見た。東京へ行くとしても、彼女は人の出入の多い、いつ佃の来るかもしれぬ動坂へ行くのは厭であった。彼女は、素子のところへ行く積りであった。そして、誰にも会わず、都会の賑やかさと素子の皮肉なしかし快い鼓舞だけを吸いこんで来よう。
伸子は勢いづいて歩いたが、急に、自分が一枚も単衣を持って来ていないことに思い当った。袷で六月東京は歩けない。妙案が浮んだ。彼女はいそいで家へ戻り、箪笥から藍縞の袷を出し、畑の向うに住んでいる、月が鏡になればよいという俗謡をうたって聞かせた婆さんのところへ持って行った。彼女はせきこんで頼んだ。
「これの裏をみんなはがして、裾と襟をくけて頂戴。