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Japanische Klassiker mit Furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme

Aozora Bunko

隈ない明りの下に、書架が林のように並び、伸子の跫音は高く天井に反響した。読書室で、誰かが席から立ち上った音がした。伸子は足を速めた。佃はいた。独りだ。彼は入口の方を向き、入ってくる伸子を迎えるように、椅子の背に左手をかけ、立っている。――何処か少し窶れたような彼の顔を見た刹那、伸子は、今まで自分を支えていた軸が、響を立ててくずおれるのを感じた。

最初の感動がやや鎮まると、伸子は佃と並んでかけた。短い言葉で旅行の有様を尋ねた。彼女は薄い白い紙包みを出した。

「お土産、――あけて御覧なさい」

佃は、珍しそうに、覗き覗き包みをほどき、中からでてきた子家鴨を見ると、一時に微笑が顔に輝いた。

「これは可愛い! 有難う。どうしたのです?」

「きのう見つけて買って来たの。安川さんと」

佃は、無骨に平らな指先で、ふわふわしたにこげをなでたり、鞄の上を歩かせて見たり、罪なく子家鴨と戯れた。伸子は、その平和な顔を、苦しい心持で眺めた。彼は、この自分が、次の瞬間に何を云おうとしているのか、まるで知らない。自分達の運命が、この数分に定まろうというのに!

伸子は、重大な話を切り出すに、一種の辛さを感じた。