Japanische Klassiker mit Furigana
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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.139 Zeichen · 208 Bildschirme
お詣りの帰りは、芝大門前の自分の家へ行ってくつろぐなり、猿若町へ延して、芝居を覗くなり、自由に夕景までは遊んで帰るが宜い――という、よく解った英山公の許しがあったので、お園は丈太郎を目黒の寮まで送り届けると、口止めやら心付けやらを存分にはずんで、供の者を銘々の好きな場所へ追いやり、自分は其の儘踏み止まって、この恐ろしい疑いを解こうと決心したのでした。
「…………」
丈太郎は相い変らず差しうつ向いて、田螺のように唇を閉じて居ります。これも栄華の名残りの古渡りの唐桟に、博多の帯、少し薄い膝に手を置いて、色白の細っそりした顔が、男乍らたけてさえ見えるのに、何んと言うことでしょう、側には脱ぎ捨てたばかりの汚いねんねこと浅葱の手拭と、正護院の本尊なる弥勒菩薩の木像が、唐紙に凭せかけられたまま、慈眼を垂れて二人を見護って居るのでした。
「あの寺荒しとか言うのが、若しや、若しや――」
お園の唇は恐怖の予感におののきました。この在五中将のような美しい男、気心も知り抜いた積りの許嫁の夫が、近頃江戸中を騒がして居る「寺荒し」――あの仏像仏具を専門に盗む、兇悪無残な盗賊とは、どうして信じられましょう。