Japanische Klassiker mit Furigana
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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.139 Zeichen · 208 Bildschirme
手槍は鐘を貫いた
手槍は鐘を貫いた
大振袖を着た怪物は、月下の庭を突っ切って、隣の護持院の境内に逃げ込んでしまいました。
言うまでも無く護持院というのは、将軍綱吉の生母、桂昌院の帰依を得た僧隆光の為に、元禄元年三月、神田橋外の地を相して建てた七堂伽藍で、その結構は眼を驚かすばかり、徳川最盛時の財力を傾けて建立しただけに、本堂の如きは、上野の寛永寺にもまさると言われた程です。
怪異は真一文字にその境内に飛び込んだのですから、追い縋って来た高蔵人も驚きました。
併し、脅しや冗談でやって来たわけでは無く、相手は妖怪変化ですから、お寺の境内であったところで、此のまま見のがして引き返すわけにも参りません。
尤もその頃は綱吉も桂昌院も死んで、さしもの護持院もすっかり勢力を失い、綱吉に殺生の禁を勧めて、三十年間天下を苦しめた怪僧隆光は、祟りを恐れて故郷の長谷へ逃げ出し、護持院は名題の札屋敷を取り毀し、銅瓦を売り払って維持の料に当てるという有様、手槍を提げて境内へ飛び込んだところで、別にとがめ立てする者もありません。
「己れッ、変化待てッ」
暫らくは木立を潜り、石灯籠を小楯に取り、縦横無尽に逃げ廻って居た怪物も、到頭高蔵人の鋭い槍先に追い詰められ、門前の鐘楼目がけて、バタバタと駆け登ってしまいました。