Japanische Klassiker mit Furigana
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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.139 Zeichen · 208 Bildschirme
を挙げて相手の尼を見ました。
「御主人には、何やら屈托がおありと見えます――お顔の様子では、近頃亡くなられた方を忘れ兼ねて入らっしゃるのでは御座いませんか」
図星を指した言葉、尼は香爐を下に置いて斯んな事を言います。
「えッ、どうしてそれが?」
「それ位の事が解らなくて何んとしましょう。丁度幸い、此処に反魂香を持参いたして居ります。これを焚くと亡くなられた方の姿が、ありありと眼の前に現れ、在りし日と同じようなお話をなさいます。世に得難い名香乍ら貴方様の為に焚いて進ぜましょう」
尼は袂の中からもう一つの重香箱を取り出しました。漆塗の印籠蓋を払うと、中に入って居るのは、黒い煉香が数塊、尼はその内の一つを香匙で取って、銀葉の上に載せました。
と見ると、立ち昇る紫煙、
四方は夕暮のようにたそがれて、室の中を籠むる異薫に、丈太郎は暫らく夢心地に俯向きましたが、やがて身心水の如く澄み渡って、今まで感じた事も無い、不思議な衝動が、全身の脈管を流れ去ります。
思わず顔を挙げると、
「あッ」
眼の前に端坐して居る筈の醜い尼の姿は掻き消えて、香爐から立ち昇る淡い淡い煙幕の蔭に居るのは、高島田に薄化粧をして見馴れたお腰元風の美しいお園です。