Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

しんきだんクラブ

奇談クラブ(全)

野村 胡堂

Lesen Sie 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.139 Zeichen · 208 Bildschirme

Aozora Bunko

取り出したのは、命と貞操とを賭けて手に入れた蘭奢待の名香。

あらゆる望みを失ったお園は、最後の思い出に、せめて此の名香を※(「火+(麈-鹿)」、第3水準1-87-40)いて、その香の中に死んで行こうとしたのです。

銀葉の上へそれを置くと、紫煙はほのぼのと立ち昇って、四辺を籠むる異薫は、何に譬えようもありません。気も心も水の如く澄み渡って、今は邪念も懊悩も霧の如く消え去る心地、お園は思わず両掌を合せて、御仏の名を称えました。

時ならぬ名香の香りに、ハッと我に返って丈太郎。

「お、蘭奢待だ」

見ると自分の膝の上に居るのは、美しいお園とは似も付かぬ醜い尼です。

ハッと突き飛して、香の香りを尋ねて奥へ――。

一と間の唐紙を開くと、本物のお園が香爐から立ち昇る煙を前にいとも閑寂な姿で合掌して居ります。

「お、お園」

「丈太郎様、私はまだ生きて居りました、この蘭奢待を持って参り度いばかりに――」

美しい眦に籠むる、千万無量の怨みは、丈太郎の心も凍らせそうです。

「お園、お前こそ本当のお園だ」

物言うお園の手を取って、丈太郎は其の場に端坐しました、純情な高雅な本物のお園の気品が、それ以上の事を丈太郎に許さなかったのです。