Japanische Klassiker mit Furigana
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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme
月にさらされた左内の顔は、美しくて高尚で女性的であった、眼をほんのりと今あけた。鮠の形をした切れ長の眼で、睫毛が一倍に濃かったが、瞳に月光が宿っているのか、その濃い睫毛の合わさり目から、露のような光がチロチロと見える。神経質らしい高い鼻が、まともに月光を受けているので、寸が短く見做されたが、まことはむしろ長いほうであった、その鼻の影が上唇のあたりにちょんぼりと黒く染まって見える。ボッとあけられている唇の形はまるで女のそれのように、愛らしくて優しかった。が円くて頬がふくよかでやはり女のそれのようであった。そういう顔の下辺にあたって、すなわち胸の真ん中のあたりに、交叉された二本の腕があったが、背後から、しっかりと羽掻い締めにしている、山県紋也の腕なのであった。であたかも十字架のように見える。腕の十字架に締めつけられて、左内は身動きさえできないのであった。
羽掻い締めにしている山県紋也は、左内のうわごとを耳にしてどのように驚いたかしれなかった。というのは先刻方遭遇った駕籠の中の女のいった言葉が、思い出されたがためであった。――でも左内様は妾のものさ。