Japanische Klassiker mit Furigana
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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme
本職は放火商売
と、すぐに女の声がした。
本職は放火商売
「妾にとりましては印籠などは、どうでもよかったのでございますよ。欲しいと思ったのではございませんよ」依然としてその声は悪戯ッ児らしい、揶揄的の調子を帯びていた。潜り門の扉をへだてておりながら、声がハッキリと聞こえて来るのは、扉の合わせ目へ近々と口を寄せて物をいっているからであろう。追っかけて女の声がした。
「妾の本当に欲しいものは、ほかにあるのでございますよ」
「ほう、さようかな、なんでございましょう?」
どうやら若い武士の性質は、磊落で放胆で明るいらしい、叱※(「口+它」、第3水準1-14-88)も浴びせずに訊き返した。
と、女の声がした。
「誠心なのでございますよ」
「誠心? ほほう誠心がお好きか。風変りのものがお好きと見える」
またもや女の声がした。「鉄石心と申しましても、よろしいようでございますよ」
「だんだんヘチ物を望まれるようで」若い武士は興味を感じたらしい、面白そうにこういったが、「忠魂義胆などはいかがなもので?」――で、女の言葉を待った。
「何より結構でございますよ。ぜひとも頂戴いたしたいもので」だがこういった女の声には、今まであったような揄揶的のところや、悪戯ッ児らしいところなどは、おおよそ封ぜられてなくなっていた。