Japanische Klassiker mit Furigana
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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme
妖艶の姫
で紋也は右手を伸ばして、宙で受け止めて握ったが、それはすられた印籠であった。で、手早く腰へつけたが、
「お粂殿。お粂殿」と声をかけた。が、お粂は立ち去ったのでもあろうか、潜門扉の内側から返事がなかった。
「はーン」と紋也は笑ったが、自分へ向かって笑ったのである。「これではまるっきり化かされたようなものだ。いつまでもまごまごしていようものなら、どんな目に逢わされるかわからない。帰ろう、帰ろう、家へ帰ろう」――で、紋也は二丁目のほうへ、片側町の家並みに添って、足を早めて歩き出した。しかし十間とは歩かないうちに、足を止めざるを得なかった。異様の行列が行く手のほうからこちらへ歩いて来たからである。
妖艶の姫
一挺の女駕籠を取り巻いて、数人の男女が歩いて来る。――これが行列の大体であった。異様なことではないではないか。――と、こういう事もいえばいえる。しかしやっぱり異様なのであった。駕籠が第一に異様である。大大名のお姫様が、外出の場合に使用するような、善美をきわめた女駕籠であって、塗りは総体に漆黒で、要所要所に金銀の蒔絵が、無比の精巧をもってちりばめられてある。