Japanische Klassiker mit Furigana
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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme
狂女と子供
※(歌記号、1-3-28)あの山越えて行く時は、里の土産に何持たむ。……
狂女と子供
佐久間町の二丁目と三丁目との境いは、儒者ふうの老人の籠っている例の宏大な屋敷であって、その屋敷から東南の方が、佐久間町の三丁目となっていて、それと反対の西北のほうが、佐久間町の二丁目となっていた。で、怪しい四軒の空家は、二丁目のほうに属しているのであった。あの山越えて行く時は里の土産に何持たむ……と、今しもこういう子守唄の声が、女の声で細々と聞こえて来たが、それは四軒の怪しい空家の、西北のはずれの一軒から、さらに西北へ数軒離れた横町へ通ずる狭い横丁の、一所から聞こえて来るのであった。その横丁は狭い上に家並みが不揃いで凸凹があった。で、あまねく照らしている月の光もこの横丁へは、あまねく落ちては来なかった。が、あたかも水たまりかのように、道の上へ蒼白い一たまりほどの、水のようなものがたまっていたが凹んでいる家の屋根の上にある月がそこへだけ光をこぼしてそこだけを明るめているのであった。
と、その一つの月の光の圏へ一人の女が現われた。痩せ細った身体、痩せ細った顔、髪は乱れて肩へかかり、裾は崩れて脛を現わし、見る影もなく窶れている。