Japanische Klassiker mit Furigana
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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme
顔が合わさる!
小次郎に何の意識があろう。差し出された女の手の先に磁気でも起こっているかのように、連れて小次郎も手を出した。刃物の地に落ちた音がしたが小次郎が刀を落としたのであろう。四本の腕がからみ合い、二つの顔が近寄って行く。
と、この怪しくも肉欲的の、それでいて静的のたたずまいを破って、叱咤するようないかめしい声が、一所から聞こえて来た。
「姫! 穢らわしい! 狂気なされたか!」
抜き身をひっさげて戦慄しながら立っていた北条美作であった。
顔が合わさる!
最初は切って捨てようとし、二度目は生け擒りしようとし、三度目にはまたもや切り捨てようとして、刀を高く振りかむった時に、松永町へ通う横丁から、駕籠の一団が現われ出て、殺そうとした小次郎を、瞬間に中へ取りこめて、切ろうとして追って来た美作を、恐れげもなくさえぎったのであったが、この時の美作の心持ちといえば、行列が異様であったがために「気を呑まれた」というあの心持ちであった。が、彼ほどの人物である。いつまでも気を呑まれてはいなかった。ましてや彼はこの時代における、梟雄であって権臣であって、大目附であろうと若年寄であろうと、はばかったほどの勢力家であった。