Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme

Aozora Bunko

も悲しい出来事が、すぐにも起こって来るであろうと、そういう気勢が感じられた。そうしてそれがお菊の心を、いよいよ苦しいものにした。

足もとに空色の螢草の花が、一束脆気に咲いていたが、花弁がかすかに顫え出した。花に添ってお菊の素足がある。それが顫えたがためであろう。

お菊の感じは正しかった。左内は捨て石に腰をかけて、お菊の姿をみつめながら、焦立つ心をおさえつけていた。左内の瞳に映っているものは、お菊のうつむけた形のよい額で、それが紅潮を呈していて、そこへ前髪の影がさして、眉毛のあたりの暗く見えるのさえ、左内には惚々しく悩ましかった。

いつまでもお菊が黙っている。それが左内の心持ちを、不安と焦燥とに導いたのも、お菊の察した通りであった。膝においた手を捻るように揉んだが、汗がまとっているからでもあろう、ツルリツルリと指がはずれた。「なんとも返辞をしないのは、俺を嫌っているからであろうか? それとも初心の乙女心から、恥じらい切っているからであろうか?」これが左内には疑問であった。「もしも前者ならば絶望である。もしも後者ならば口説き立てて、相手の心に熱情を燃やして、本心を語らせる必要がある。