Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme

Aozora Bunko

……」

こう鈴江はいって来たが、膝の上へ置いていた縫いかけの袖を、しずかに取り上げると畳の上へ敷いて、縫い目を爪先でこするようにした。

「上等の袷が仕立て上がります。明日から着せてあげましょう。くよくよせずと向島へでもいって、秋草の花でも見て来るがよいよ。……でもほんとにお前さんはこのごろ影が薄くなったねえ。妾にはなんとなく心がかりだよ。よくないことでも起こらなければよいが」

――と、その時ポツンという、ささやかな音がしたかと思うと、今まで燭台の向こう側にいた蟋蟀が近くへ飛んで来た。と、そろそろと歩き出したが、黒い羽根を燭台の灯に光らせて、鈴江の指の先まで来た。

「…………」無言で鈴江は手をのばすと、素早く蟋蟀を指の先でつまんだ。「ねえ小次郎やこれをご覧、可愛らしいけれども弱々しいではないかい。ちょうどお前さんのようだよ」眼の前へ蟋蟀をかざすようにしたが、「ちょっとでも指の先へ力を入れて、ほんの心持ち押えただけでも、弱い虫は死んでしまうだろうよ。お前さんもそんなように思われるねえ。ちょっとでも荒くあたろうものなら、お前さんは死んでしまいそうだよ」二本の指をヒョイといらった。