Japanische Klassiker mit Furigana
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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme
なんという不思議な一団なのであろう? が、この不思議な一団はいつぞやも佐久間町の往来へ、このような姿で現われて出て、小次郎の兄の山県紋也を、驚かせたことがあったはずであり、北条美作の子息にあたる左内をおびき寄せたはずである。が、あの時には駕籠の扉があいて、姫君姿の妖艶な女が顔をのぞかせたはずであった。今夜もそういうことにならなければなるまい。
はたして駕籠の扉が内側からあいて、女が顔をのぞかせた。夕顔の花のそれのように、なんという白い顔であろう。二顆の宝石でも懸けたように、なんという光の強い眼であろう。いつぞやの夜の姫君姿の女と同じ女であった。いつぞやの夜にはその女が物いうごとに形容に絶した、愛欲をそそる馨しい匂いが、息苦しいまでに匂って来て、紋也を恍惚の境地へまで墜落させたはずであったが、はたして今夜はどうであろうか?
今夜もいつぞやの夜と同じであった。女の顔は駕籠の中で月光に隠されているがために、一様にほの白く見えるばかりであったが、その顔の一所に黒い※ができて――女が唇をあけたからであろう――こう小次郎へいった時に小次郎の心を恍惚とさせてほとんど絶息させるまでの馨しい匂いが、言葉と一緒に匂って来た。