Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme

Aozora Bunko

うたいながら先へ進んで行く。

水戸様石置き場の空屋敷を、今はことごとく燃やしつくしたのでもあろうか、空を染めていた火事の紅色は、この時おおかた褪めてしまって、夜がふけたので冴え冴えしさを加えた、月光ばかりが空にみなぎり、家々の甍の屋根を白め、往来の片側を流れている神田川の水に銀箔を踊らせ、往来を霜のように色づけていた。と、その往来の上に縮んだり延びたり、大きくなったり小さくなったりする、異様な黒い形があって、嘉門を追いながらついて行ったが、なんでもない嘉門の影法師なのであった。その影法師の一所から、細っこい枯れたような枝が出た。

嘉門が月でも捉えようとするのか、空へ向かって手を上げたのである。と、影法師が地上から、全然形を消してしまった。疲労たのか酔って苦しいのか、嘉門が地上へうずくまったからである。と、にわかに影法師が、地上へ現われて動き出した。しかも元気よく延び縮みする。嘉門が元気よく歩き出したからで、どことなくようすが浮き浮きとしている。と、嘉門はうたい出した。

「太郎冠者、おじゃるかや」「は、おん前に」「何がな面白いことはないか」「権門衆のおやりになることは、ことごとく面白うおじゃります」