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Japanische Klassiker mit Furigana

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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme

Aozora Bunko

そういう顔をバッとおおうて簾のようにかかっているのは、髷のない乱れた髪の毛であって、歩むにつれてなびくように揺れる。はだけた襟から見えているのは胸に巻いた痛々しい白布であり、崩れた裾から見えているのは、これも脛を巻いた痛々しい、少し血のにじんでいる白布であった。

畳の数にして十畳あまり、それでも前へ進んだであろうか、ついていた刀をだるそうにあげると、グーッと前へ差し出して、左の手で鞘を上向きに握り、右の手に柄の頭を握り、紋也はその時足を止めた。玉のようにむき出された血走った眼の、なんと鋭く老儒者の顔を睨みつづけていることか! と、また二、三歩前へ進んだ。老儒者を切ろうとでもするのであろうか? もしもそうならば部屋の中に端坐をしている二十人余の、武士たちがいっせいに立ち上がってさえぎらなければならないではないか。武士たちは寂然と静まっていた。

と、また紋也は二、三歩進んだ。なぜ武士たちはさえぎらないのであろう?

紋也の顔の表情に、殺気らしいものが一抹もなく、驚きの表情ばかりがあるからであった。すなわち玉のようにむき出された眼も、椀のようにワングリと開かれた口も、驚きの表情にほかならないのであった。