Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme

Aozora Bunko

疑いの心

傘の破れ目から雨が漏って、それが傘の柄を伝わって、ボタボタと死骸の上へ落ちる。それが君江には悲しいらしい。ひた泣きに泣いて掻き口説くのであった。

疑いの心

泣いても泣いても泣ききれなければ、口説いても口説いても口説ききれない。これが君江の心らしかった。

「雨におぬれにならないようにと、傘を持ちましてわざわざと、お迎えに参ったのでございます。傘はお役に立ちませんでした。いえいえお役に立ちました。このようにお父様をおおうております。でもわたくしといたしましては、傘で死なれたお父様をおおうてあげようとは思いませんでした。ほんとに夢のようでございます。悲しい悲しい悲しい夢! ……ああボタボタと雨が漏る。雨までがお父様をさいなむ。不幸な不幸なお父様!」

木立ちを通して田圃を越して、雨に漉されて色を増したはるかの町に燈火が見える。

自分は傘をさそうともせずに、しとどに雨にぬれながら、ひた泣きに君江は泣くのであった。

「上州甘楽郡小幡の城主、織田美濃守信邦様と申せば、禄はわずかに二万石ながら、北畠内府常真様のお子、兵部大輔信良様の後胤、織田一統の貴族として、国持ち城持ちのお身柄でもないのに、世々従四位下侍従にも進み、網代の輿に爪折り傘を許され、由緒の深いりっぱなお身分、そのお方のご家老として、世にときめいた吉田玄蕃様の一族