Japanische Klassiker mit Furigana
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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
Lesen Sie 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 267.766 Zeichen · 530 Bildschirme
真面目な語調となったのであった。
しかし若い武士はなんと思ったか、道化た口調で押し切った。「忠魂義胆がご入用なら、これからせいぜい骨を折って仕入れることにいたしましょう」
――と、女の声がした。「それにはおよぶまいと存ぜられます。ずっと昔から今日まで、変らずお持ちつづけておいでになる、その忠魂義胆だけで、もうもう十分でございますよ」
「どうもな、いよいよ変な女だ。俺のことをいくらか知っているらしい」若い武士はいささか気味が悪くなった。で、打ち案じて黙っていた。潜り門の向こう側でも黙っている。で、しばらくはひそかであった。
神田川を越した向こう側の、市橋下総守の屋敷の辺から、二声三声犬の声がしたが、つづいてギャッという悲鳴が起こった。往来の者に蹴られたのでもあろう。佐久間町の二丁目の方角から、駕籠が一挺来かかったが、相生町のほうへ曲がってしまった。
で、この境地は静かであった、霜でも置いたような月光が、往来を一杯に満たしている。
と、その時女の声が、潜り門の向こう側から呼びかけた。「妾は掏摸ではございません。でも掏摸かもしれません。妾は煙術師ではございません。