Japanische Klassiker mit Furigana
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ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
Lesen Sie 小出楢重随筆集 (ならしげざっぴつ) von 小出 楢重 (こいでならしげ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.351 Zeichen · 657 Bildschirme
世界中が黙っているのと同じ事だから全く静寂で、長閑で、ただ何かごたごたと音がしているだけであった。
その代り、幸福が訪問しても、わからずにすんでしまう事もある。
私が南仏カニューの安宿に二、三ヶ月滞在していた頃の事だった。カニューは、ルノアルの別荘のある美しい村である。地中海に面した、暖かい処であるから、冬になると巴里から沢山の画家がやってくるらしい。当時もこの宿に硲君も正宗氏なども来ていて、毎日近くのシャトウやオリーブの林を描きに出かけたものだった。正月だというのに外套も着ずに写生が出来るのだから結構だった。
私たちのその安宿というのは、真とに田舎風の古めかしい家だった。この宿にジョセフィンという女中がいた。アルサスの女だといって自慢をしていたが大柄な男のような女で鼻下には多少の口髭もあって、あまり美しいとは考えられなかった。しかしアルサスの女は大変美しいのだと彼女は常にいっていた。それが毎朝、カフェーとパンを私の枕もとへ運んだり部屋の掃除に来たりした、随分よく働く女でかなり親切にもしてくれた。
或日、彼女は部屋の掃除にやって来て、私の写生帖へ何か書き記して見せるのであった。