Japanische Klassiker mit Furigana
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ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
Lesen Sie 小出楢重随筆集 (ならしげざっぴつ) von 小出 楢重 (こいでならしげ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.351 Zeichen · 657 Bildschirme
大和の記憶
去年のこと
日本中、世界中は臍と化してしまう。怖るべき臍の数だ。
無数の乳房を考えて見る。そして無数の生殖器を考えて見る。全くやり切れない気がする。
やはり人間は全体として見て置く方が完全であり、美しくもあるようだ。それだのに、私は何んだか部分品が気にかかる。
大和の記憶
五月になると、大和の長谷寺には牡丹の花が咲く。常は寂しい町であるが、この季節になると小料理屋が軒を並べ、だるまという女が軒に立ち、真昼の三時でさえもわれわれを誘うのである。初夏の陽光に照されただるまの化粧と、牡丹と、山門の際でたべたきのめでんがくの味を私は今に忘れ得ない。そしてそれらが何よりも大和を大和らしく私に感ぜしめ、五月を五月らしく思わしめるものである。
去年のこと
私は去年の秋、一種の神経的な苦しい病気をした。それは心臓の活動が一分間に数回も休止するというすこぶる不安な病気であった。医者にそのくるしみを訴えても、本当によくのみ込めないらしかった。
「なるほど、そう、はあ」
という位の事務的な同情をするだけであった。そして決して死ぬものでないといった。
死なないことが確かであっても、苦しいことには相違はなかった。