Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
Lesen Sie 小出楢重随筆集 (ならしげざっぴつ) von 小出 楢重 (こいでならしげ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.351 Zeichen · 657 Bildschirme
貧乏で退屈で希望なくてつまらない時、私は蚊にたべられた場所を掻くことを楽しんだことさえあった。パリの客舎でノスタルジーを感じた時、南京虫のきずあとをいつまで掻いて長い時間を消したことがあった。
冬のある暖か過ぎる日にはふと一匹の蝿がうなりを立てて飛び廻ることがある。私はその音で冬の寒さを忘れることが出来る。
冬から春へのある季節になると、何という種類の蝿か私にはわからないが、妙に細長く力のない蝿が便所の中へ発生することがある。その蝿は発生すると同時に恋愛を始め、恋愛をつづけながら、しかし少々のことでは離れず重なり合って死んで行くのを見る。まったく猥らな相貌を呈した厭味な蝿である。
私は郊外へ住んでから蚊の多くの種類を知るようになったが、一つだけ私の厭な奴があることをたまに発見する。それはお尻を高射砲の如く突き立てて壁へとまるところのマラリヤ蚊である。私がインド洋航海中同じ部屋にいた人がシンガポールへ上陸した時、その蚊から頂戴して来たマラリヤを発病したのだ。蒸暑いムンスーンのインド洋上で故郷を思いながら四〇度の熱を一日何回となく繰り返すことはまったく気の毒だと私は思ったが、しかし狭い同室で発汗している人があることは、そしてそれがマラリヤであることは私たちを怖れさせた。