Japanische Klassiker mit Furigana
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ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
Lesen Sie 小出楢重随筆集 (ならしげざっぴつ) von 小出 楢重 (こいでならしげ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.351 Zeichen · 657 Bildschirme
私が二階へ行こうとして階段を登りかかると大きな一匹が下りて来て、ちょうど階段の途中で蜘蛛と私がすれちがったことがあった。私は悲鳴を上げた。蜘蛛はその声に驚いて飛び上がった、それでまた私が夢中になって座敷へ転がり込んだ。
それから私の神経は極度に興奮して、一寸蝿が首筋へとまってさえも私は飛び上がった位だ。私は大道君に頼んで、一つ一つ座蒲団をもって退治してもらった。鍋平朝臣の蜘蛛退治というのはあまり伝説にも見当たらないようだがなかなか手際のいいものだった。私はその死骸を見るに忍びないので、始末のつくまで、庭へ出て待っていたことである。私は道後を思うとすぐ蜘蛛を思い出していけない。
去年の夏は紀州の大崎という片田舎の漁村へ、研究所の夏季講習会があったので生徒とともに出かけてみた。
ところがその宿の便所というのが、そもそも私達が到着したその時から気にかかって堪らないものであった。その夜のことだ、私はどうしても便所へ入る必要に迫られたものであった。もちろん淋しい漁村のことだから、便所に電灯がつく筈もないのだ。その真暗の便所の壁に、どうやら何物かがいそうな気がしてたまらないのであった。