Japanische Klassiker mit Furigana
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やまをおもう
山を思う
石川 欣一
Lesen Sie 山を思う (やまをおもう) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 79.814 Zeichen · 157 Bildschirme
三、写真機
悪玉はぽってりした彼の女房である。悪玉はこの雷雨を幸に、雨戸をしめて更に不義の快楽をくりかえしていることだろう。これに反して善玉は、若くてスラリとした山田さんの奥さんだ。奥さんは定めしこの雨に苦しんでいることだろう。救わねばならぬ……保護せねばならぬ……という気持でいるのが、いつの間にか自分の子供みたいな年齢の奥さんが、自分を救ってくれ、保護してくれる観音様みたいな気がして来た。まろびつ、ころげつ、彼は走った。いつか雨はやんだ。そして日の暮れ方、とある野営地に山田さんの緑色のテントが張られ、その前には焚火が勢いよく燃えさかり、白いスウエッターを着た山田さんの奥さんが虹を見上げているのを見ると、彼はクタクタと濡れたいたどりのしげみの中に膝をついてしまった。まっかに充血した目に、涙がうかび出た。
三、写真機
これは「彼」の第二部になるか、独立したものになるか、まだ見当がついていない。彼は山田さん夫妻と死んだ女房の弟とをつれて山へ入った。女房が間男をしている暗く淫な場面は依然頭にこびりついているが、山に馴れぬ義弟を自分の後継者として教育することと、山田さんの昔にかわらぬ気持と、別して山田さんの奥さんの清浄な美しさと無邪気さと、この若くて美しい奥さんの世話を焼くことの愉快さとが、彼の心を明るくすることが多い。