Japanische Klassiker mit Furigana
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やまをおもう
山を思う
石川 欣一
Lesen Sie 山を思う (やまをおもう) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 79.814 Zeichen · 157 Bildschirme
彼は山田さんにあやまり、その晩の夜営地を最初の予定地より二里ばかり手前にしてもらって、弁当も食わずに大町まで飛んで帰る。荷物は磧の石の間にかくした。空身だからとても早い。間もなく大町の旅館につくと、旅館の主人に「お前が出るとすぐ神さんが来て山の案内賃を三日分前借して行った」といわれる。
これは不愉快なことだった。そんな真似をしてはいけないと固く申し渡してあったのだ。が、まア或いは親類に病人でも出来たのかも知れぬと思って、一寸自宅に寄って見た彼は、恐ろしいものを見てしまった。女房がまっぴる間、若い男を引き入れて、いわゆる不義の快楽にふけっていたのである。
気がつかずにいる不義の二人のみだらな姿に、かっとなった彼は納屋から鉈を取り出して台所に忍びよったが、ふと太陽を横切った雲が地上に投げた影に、空を仰ぐと思いもかけぬ雷雲が現れている。彼は鉈を投げ出し、近所の荒物屋で油紙を一枚買うとそれでマッチを包み、一目散に山をめがけて走り出した。電光、雷鳴、沛然たる豪雨、彼は狂人みたいに走った。朝から何も食わず、おまけにひどい精神的打撃を受け、心身ともに疲労困憊している彼の頭の中で、善玉と悪玉が猛烈に争った。