Japanische Klassiker mit Furigana
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にっき
日記
宮本 百合子
Lesen Sie 日記 (にっき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.193 Zeichen · 131 Bildschirme
四月三十日
◎
私は正確な磁石と、寒暖計、湿度計のようなものを近頃欲しいと思う。漠然と自然に包まれて我を忘れて居るのもよいが、細かく宇宙の生活の模様を理解して、自分と結びつけたら、さぞ面白かろうと思う。星をぼんやり夜の空に見上げるのも興あることだが、星座の名と位置を一旦知ると、知らずに如何うして今迄平気で居られたかを思わずに居られない新たな歓びを覚えるだろう。それと同様なことが他の自然の現象にも確に云えるに違いない。
今日は、どの位の湿度で、どの方向に風が吹き、この暖かさの為に、私の庭の小さな風景も、斯う変って見えると云う理解は、どれ程、生活を豊富にするか。これは私にとって、人を見た時、その性格や圏境を、根まで知り度いと思う熱望と、殆んど同じ、性質の傾向に属すらしい。
四月三十日 晴。
昨夜、余り月がよいので、Aを誘い散歩に出かけた。少し風があり、一点の雲もない空には、昼間降った雨の名残りで水蒸気があると見え、円い月の囲りに、大きな大きな光輪が出来て居た。鋭く光った月の周囲幾百尺かの間、淡い憂鬱な光波が大らかに拡り、むらむらと軟かに力の籠った紫灰色の縁飾りで、暗い、果のない空の他の部分と区切りをつけて居る。