Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にっき

日記

宮本 百合子

Lesen Sie 日記 (にっき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.193 Zeichen · 131 Bildschirme

Aozora Bunko

四月二十九日

今日、実に大多数の女性にとって、幸福な健全な家庭を作ると同時に、自己のみの仕事も他に成就させ得ると云う二者の麗わしい調和の境地が、一つの大きな夢想となって居ると思う。この思想は、自己の人間的良心に沈潜して反省した場合、どこ迄、安らかに肯定出来るか。

年来、自分の心に漠然と芽生えて居た疑問が、近来、境遇の実際から一層育ち、此書によって更に或種の裏書きを与えられたように感じる。

四月二十九日

非常に低気圧の気味で、空気は湿っぽく、生ぬるい風が盛に吹きまくる。新緑に包まれ刺戟の強い鮮緑色の楓樹の梢や、薔薇の芽が、彼方に此方に、揉まれる。房々とし、細かい裂け目を持った楓の緑は、遠くから見ると、巨大な羊歯(ファーン)が、風のまにまに揺れて居るような美しさを感じさせる。この軟かそうな、瑞々した緑の葉が、あんなに乾いた、何処かデスペレートな感じを与える秋の紅葉になるのか。

Aは、やや強請されて居たノスティックの原稿を書かないでもよいことになったので幸福そうに見える。珍らしく午前中からビクターをかけ、繰返し、ハンデルのラルゴを聴いて居る。起き抜けから、自分の鼓膜には、余り刺戟強く少し苦しかった。