Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にっき

日記

宮本 百合子

Lesen Sie 日記 (にっき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.193 Zeichen · 131 Bildschirme

Aozora Bunko

二月十二日

やわに生れ付いて居るのか。

二月十二日

昨日昼頃から春江ちゃんの処へ行った。門を入ると、垣一重を越して、誰か若い女の声で物を云って居るのが聞える。

「春江ちゃん」

と呼びかけて見た。内ではぴたりと声がやみ

「はあい」

と云う、快活な返事と一緒に春江ちゃんが玄関に出て来た。

「中村さんが来て被居るの」

いつか、オペラかピアノを聴きに行った時、帝劇で会い一緒にお茶をのんだ姉妹が来て居る。彼女達の父は、ゼノア会議か何かに出かけ、帰りの船で自殺して仕舞われたのだそうだ。

皆は其那こととはまるで知らず、神戸に出迎えたのだそうだ。いくら待っても父の姿が見えない。怪訝に思って居ると船長が、彼の死と、遺骸が上海に置いてあることとを知らせたのだそうだ。

初子さんとか云う姉さんの方などは、お骨が来ても、父上の死なれたことを信じられなかったのだと云う。さもあろう。恐らく今でも、帰らない父を、断念し乍ら待って居ると云う心持があるのではなかろうか。おかあさんに頼られ、何でも

「どうぞお願いだから仕ないで頂戴」

と云う風に泣きおとされる由。そう云う親の無理ではない主我的傾向と、若い娘達の意志とが工合よく調和して行くことを、かげながら祈る。