Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にっき

日記

宮本 百合子

Lesen Sie 日記 (にっき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.193 Zeichen · 131 Bildschirme

Aozora Bunko

九日、

九時四十幾分かので立つ積りで、俥屋が早く来て呉れた。が、荷がまだすっかり出来上って居ない。木箱の蓋が打ちつけてないのに、荷札もつけてない。到頭十時二十分の大船で乗り換えるのにした。

国男さんが居るので、自分は何となく安心を覚え、何をまかせて居るのではないが、ひどくまかせ切った楽な気分で汽車に乗った。女性特有の心理か? プラットフォームに行くのに、あの天井の低い廊を、ひどく馳ける人がある。自分は

「もう列車が入って居るの?」

と訊いた。

「もうとっくよ。此処から出るんだもの」

「其那に時間がないの?」

「もう七分ばかり。常盤橋へ来た頃十分位ほか無かった。云うとあわてるから……」

自分は、風呂敷包みを小脇に抱え、背は低いが、正面を見て大股に足を運ぶ彼の横顔を一寸見た。

神戸行の列車なので、転任か何か、多勢見送り人の群って居る車室に入った。

主人らしいフロックコートを着た三十代の人は、出発間際の手持無沙汰で、半円を描いた見送り人に対し、車外に立って居る。すぐ窓の内部では、妻らしい人が、自分も泣きそうな風で、むずかる四つばかりの娘をすかして居る。

東京駅を出、品川辺で、乗込んで居た妹らしい若い婦人も別れを告げると、その細君は、あまり新らしくない白い手巾を目に当て、田舎風に、而も真心をあらわして啜泣き始めた。