Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
……
古い額を眺めた健三は、子供の時の自分に明らかな記憶の探照燈を向けた。そうしてそれほど世話になった姉夫婦に、今は大した好意を有つ事が出来にくくなった自分を不快に感じた。
「近頃は身体の具合はどうです。あんまり非道く起る事もありませんか」
彼は自分の前に坐った姉の顔を見ながらこう訊ねた。
「ええ有難う。御蔭さまで陽気が好いもんだから、まあどうかこうか家の事だけは遣ってるんだけれども、――でもやっぱり年が年だからね。とても昔しのようにがせいに働く事は出来ないのさ。昔健ちゃんの遊びに来てくれた時分にゃ、随分尻ッ端折りで、それこそ御釜の御尻まで洗ったもんだが、今じゃとてもそんな元気はありゃしない。だけど御蔭様でこう遣って毎日牛乳も飲んでるし……」
健三は些少ながら月々いくらかの小遣を姉に遣る事を忘れなかったのである。
「少し痩せたようですね」
「なにこりゃ私の持前だから仕方がない。昔から肥った事のない女なんだから。やッぱり癇が強いもんだからね。癇で肥る事が出来ないんだよ」
姉は肉のない細い腕を捲って健三の前に出して見せた。大きな落ち込んだ彼女の眼の下を薄黒い半円形の暈が、怠そうな皮で物憂げに染めていた。