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Japanische Klassiker mit Furigana

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みちくさ

道草

夏目 漱石

Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme

Aozora Bunko

五十八

彼は金持になるか、偉くなるか、二つのうちどっちかに中途半端な自分を片付けたくなった。しかし今から金持になるのは迂闊な彼に取ってもう遅かった。偉くなろうとすればまた色々な塵労が邪魔をした。その塵労の種をよくよく調べて見ると、やっぱり金のないのが大源因になっていた。どうして好いか解らない彼はしきりに焦れた。金の力で支配出来ない真に偉大なものが彼の眼に這入って来るにはまだ大分間があった。

五十八

健三は外国から帰って来た時、既に金の必要を感じた。久しぶりにわが生れ故郷の東京に新らしい世帯を持つ事になった彼の懐中には一片の銀貨さえなかった。

彼は日本を立つ時、その妻子を細君の父に託した。父は自分の邸内にある小さな家を空けて彼らの住居に充てた。細君の祖父母が亡くなるまでいたその家は狭いながらさほど見苦しくもなかった。張交の襖には南湖の画だの鵬斎の書だの、すべて亡くなった人の趣味を偲ばせる記念と見るべきものさえ故の通り貼り付けてあった。

父は官吏であった。大して派出な暮しの出来る身分ではなかったけれども、留守中手元に預かった自分の娘や娘の子に、苦しい思いをさせるほど窮してもいなかった。