Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
三十八
兄はお縫さんの所から毎月彼女の母の方へ手宛が届く事をどうしてか知っていた。
「何でも金鵄勲章の年金か何かを御藤さんが貰ってるんだとさ。だから島田もどこからか貰わなくっちゃ淋しくって堪らなくなったんだろうよ。何しろあの位慾張ってるんだから」
健三は慾で淋しがってる人に対して大した同情も起し得なかった。
三十八
事件のない日がまた少し続いた。事件のない日は、彼に取って沈黙の日に過ぎなかった。
彼はその間に時々己れの追憶を辿るべく余儀なくされた。自分の兄を気の毒がりつつも、彼は何時の間にか、その兄と同じく過去の人となった。
彼は自分の生命を両断しようと試みた。すると綺麗に切り棄てられべきはずの過去が、かえって自分を追掛けて来た。彼の眼は行手を望んだ。しかし彼の足は後へ歩きがちであった。
そうしてその行き詰りには、大きな四角な家が建っていた。家には幅の広い階子段のついた二階があった。その二階の上も下も、健三の眼には同じように見えた。廊下で囲まれた中庭もまた真四角であった。
不思議な事に、その広い宅には人が誰も住んでいなかった。それを淋しいとも思わずにいられるほどの幼ない彼には、まだ家というものの経験と理解が欠けていた。