Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
百一
そんな殊更な言葉を口にするよりも誰にも会わずに黙っている方がまだ心持が好かった。
彼は普通の服装をしてぶらりと表へ出た。なるべく新年の空気の通わない方へ足を向けた。冬木立と荒た畠、藁葺屋根と細い流、そんなものが盆槍した彼の眼に入った。しかし彼はこの可憐な自然に対してももう感興を失っていた。
幸い天気は穏かであった。空風の吹き捲らない野面には春に似た靄が遠く懸っていた。その間から落ちる薄い日影もおっとりと彼の身体を包んだ。彼は人もなく路もない所へわざわざ迷い込んだ。そうして融けかかった霜で泥だらけになった靴の重いのに気が付いて、しばらく足を動かさずにいた。彼は一つ所に佇立んでいる間に、気分を紛らそうとして絵を描いた。しかしその絵があまり不味いので、写生はかえって彼を自暴にするだけであった。彼は重たい足を引き摺ってまた宅へ帰って来た。途中で島田に遣るべき金の事を考えて、ふと何か書いて見ようという気を起した。
赤い印気で汚ない半紙をなすくる業は漸く済んだ。新らしい仕事の始まるまでにはまだ十日の間があった。彼はその十日を利用しようとした。彼はまた洋筆を執って原稿紙に向った。