Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
七十二
「何だい」
細君は答えなかった。
「知らないのかい」
「ええ。また二、三日うちに上って能く御話をするからって帰りましたから、今度参ったら直に聞いて下さい」
健三はそれより以上何もいう事が出来なかった。
久しく細君の父を訪ねないでいた彼は、用事のあるなしにかかわらず、向うがわざわざこっちへ出掛けて来ようなどとは夢にも予期しなかった。その不審が例より彼の口数を多くする源因になった。それとは反対に細君の言葉はかえって常よりも少なかった。しかしそれは彼がよく彼女において発見する不平や無愛嬌から来る寡言とも違っていた。
夜は何時の間にやら全くの冬に変化していた。細い燈火の影を凝と見詰めていると、灯は動かないで風の音だけが烈しく雨戸に当った。ひゅうひゅうと樹木の鳴るなかに、夫婦は静かな洋燈を間に置いて、しばらく森と坐っていた。
七十二
「今日父が来ました時、外套がなくって寒そうでしたから、貴方の古いのを出して遣りました」
田舎の洋服屋で拵えたその二重廻しは、殆んど健三の記憶から消えかかっている位古かった。細君がどうしてまたそれを彼女の父に与えたものか、健三には理解出来なかった。