Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
御常とたった二人ぎりになった健三は、見馴れない変な宅の中に自分を見出だした。
その家の表には門口に縄暖簾を下げた米屋だか味噌屋だかがあった。彼の記憶はこの大きな店と、茹でた大豆とを彼に連想せしめた。彼は毎日それを食った事をいまだに忘れずにいた。しかし自分の新らしく移った住居については何の影像も浮かべ得なかった。「時」は綺麗にこの佗びしい記念を彼のために払い去ってくれた。
御常は会う人ごとに島田の話をした。口惜しい口惜しいといって泣いた。
「死んで祟ってやる」
彼女の権幕は健三の心をますます彼女から遠ざける媒介となるに過ぎなかった。
夫と離れた彼女は健三を自分一人の専有物にしようとした。また専有物だと信じていた。
「これからは御前一人が依怙だよ。好いかい。確かりしてくれなくっちゃいけないよ」
こう頼まれるたびに健三はいい渋った。彼はどうしても素直な子供のように心持の好い返事を彼女に与える事が出来なかった。
健三を物にしようという御常の腹の中には愛に駆られる衝動よりも、むしろ慾に押し出される邪気が常に働いていた。それが頑是ない健三の胸に、何の理窟なしに、不愉快な影を投げた。