Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
そうして目に見えない損はいくらしても解らなかった。
「宅の人はあんまり正直過ぎるんで」
御藤さんは昔健三に向って、自分の夫を評するときに、こんな言葉を使った。世の中をまだ知らない健三にもその真実でない事はよく解っていた。ただ自分の手前、嘘と承知しながら、夫の品性を取り繕うのだろうと善意に解釈した彼は、その時御藤さんに向って何にもいわなかった。しかし今考えて見ると、彼女の批評にはもう少し慥な根底があるらしく思えた。
「必竟大きな損に気のつかない所が正直なんだろう」
健三はただ金銭上の慾を満たそうとして、その慾に伴なわない程度の幼稚な頭脳を精一杯に働らかせている老人をむしろ憐れに思った。そうして凹んだ眼を今擦り硝子の蓋の傍へ寄せて、研究でもする時のように、暗い灯を見詰めている彼を気の毒な人として眺めた。
「彼はこうして老いた」
島田の一生を煎じ詰めたような一句を眼の前に味わった健三は、自分は果してどうして老ゆるのだろうかと考えた。彼は神という言葉が嫌であった。しかしその時の彼の心にはたしかに神という言葉が出た。そうして、もしその神が神の眼で自分の一生を通して見たならば、この強慾な老人の一生と大した変りはないかも知れないという気が強くした。