Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
七十
「御病人はどうなの」
あるゆる人間が何時か一度は到着しなければならない最後の運命を、彼女は健三の口から判然聞こうとするように見えた。健三は答を与える先に、まず一種の矛盾を意識した。
「何もう好いんだ。寐てはいるが危篤でも何でもないんだ。まあ兄貴に騙されたようなものだね」
馬鹿らしいという気が幾分か彼の口振に出た。
「騙されてもその方がいくら好いか知れやしませんわ、貴夫。もしもの事でもあって御覧なさい、それこそ……」
「兄貴が悪いんじゃない。兄貴は姉に騙されたんだから。その姉はまた病気に騙されたんだ。つまり皆な騙されているようなものさ、世の中は。一番利口なのは比田かも知れないよ。いくら女房が煩らったって、決して騙されないんだからね」
「やっぱり宅にいないの」
「いるもんか。尤も非道く悪かった時はどうだか知らないが」
健三は比田の振下げている金時計と金鎖の事を思い出した。兄はそれを天麩羅だろうといって陰で評していたが、当人はどこまでも本物らしく見せびらかしたがった。金着せにせよ、本物にせよ、彼がどこでいくらで買ったのか知るものは誰もなかった。こういう点に掛けては無頓着でいられない性分の姉も、ただ好い加減にその出処を推察するに過ぎなかった。