Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
七十六
しかし彼の手を着けかけたという鉱山事業はそれぎり立消になってしまった。
「まだ何にも見付からないのかね、口は」
「あるにはあるようですけれども旨く纏らないんですって」
細君は父がある大きな都会の市長の候補者になった話をして聞かせた。その運動費は財力のある彼の旧友の一人が負担してくれているようであった。しかし市の有志家が何名か打ち揃って上京した時に、有名な政治家のある伯爵に会って、父の適不適を問い訊したら、その伯爵がどうも不向だろうと答えたので、話はそれぎりでやめになったのだそうである。
「どうも困るね」
「今に何とかなるでしょう」
細君は健三よりも自分の父の方を遥かに余計信用していた。健三も例の怪力を知らないではなかった。
「ただ気の毒だからそういうだけさ」
彼の言葉に嘘はなかった。
七十六
けれどもその次に細君の父が健三を訪問した時には、二人の関係がもう変っていた。自ら進んで母に旅費を用立った女婿は、一歩退ぞかなければならなかった。彼は比較的遠い距離に立って細君の父を眺めた。しかし彼の眼に漂よう色は冷淡でも無頓着でもなかった。むしろ黒い瞳から閃めこうとする反感の稲妻であった。