Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
彼女の胸には微かにこういう感じが湧いた。しかし彼女はその微かな感じを言葉に纏めるほどの頭を有っていなかった。同時にその感じには手柄をしたという誇りと、罰を受けたという恨みと、が交っていた。いずれにしても、新らしく生れた子が可愛くなるばかりであった。
彼女はぐたぐたして手応えのない赤ん坊を手際よく抱き上げて、その丸い頬へ自分の唇を持って行った。すると自分から出たものはどうしても自分の物だという気が理窟なしに起った。
彼女は自分の傍にその子を置いて、また裁もの板の前に坐った。そうして時々針の手をやめては、暖かそうに寐ているその顔を、心配そうに上から覗き込んだ。
「そりゃ誰の着物だい」
「やっぱりこの子のです」
「そんなにいくつも要るのかい」
「ええ」
細君は黙って手を運ばしていた。
健三は漸と気が付いたように、細君の膝の上に置かれた大きな模様のある切地を眺めた。
「それは姉から祝ってくれたんだろう」
「そうです」
「下らない話だな。金もないのに止せば好いのに」
健三から貰った小遣の中を割いて、こういう贈り物をしなければ気の済まない姉の心持が、彼には理解出来なかった。