Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
脂が溜っていると見えて、吸う時にじゅじゅ音がした。彼は無言で懐中を探った。それから健三の方を向いた。
「少し紙はありませんか、生憎烟管が詰って」
彼は健三から受取った半紙を割いて小撚を拵えた。それで二返も三返も羅宇の中を掃除した。彼はこういう事をするのに最も馴れた人であった。健三は黙ってその手際を見ていた。
「段々暮になるんでさぞ御忙がしいでしょう」
彼は疎通の好くなった烟管をぷっぷっと心持好さそうに吹きながらこういった。
「我々の家業は暮も正月もありません。年が年中同じ事です」
「そりゃ結構だ。大抵の人はそうは行きませんよ」
島田がまだ何かいおうとしているうちに、奥で子供が泣き出した。
「おや赤ん坊のようですね」
「ええ、つい此間生れたばかりです」
「そりゃどうも。些とも知りませんでした。男ですか女ですか」
「女です」
「へええ、失礼だがこれで幾人目ですか」
島田は色々な事を訊いた。それに相当な受応をしている健三の胸にどんな考えが浮かんでいるかまるで気が付かなかった。
出産率が殖えると死亡率も増すという統計上の議論を、つい四、五日前ある外国の雑誌で読んだ健三は、その時赤ん坊がどこかで一人生れれば、年寄が一人どこかで死ぬものだというような理窟とも空想とも付かない変な事を考えていた。