Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
十六
これが健三にとって大きな疑問になった。実際彼は幼少の時分これほど世話になった人に対する当時のわが心持というものをまるで忘れてしまった。
「しかしそんな事を忘れるはずがないんだから、ことによると始めからその人に対してだけは、恩義相応の情合が欠けていたのかも知れない」
健三はこうも考えた。のみならず多分この方だろうと自分を解釈した。
彼はこの事件について思い出した幼少の時の記憶を細君に話さなかった。感情に脆い女の事だから、もしそうでもしたら、あるいは彼女の反感を和らげるに都合が好かろうとさえ思わなかった。
十六
待ち設けた日がやがて来た。吉田と島田とはある日の午後連れ立って健三の玄関に現れた。
健三はこの昔の人に対してどんな言葉を使って、どんな応対をして好いか解らなかった。思慮なしにそれらを極めてくれる自然の衝動が今の彼にはまるで欠けていた。彼は二十年余も会わない人と膝を突き合せながら、大した懐かしみも感じ得ずに、むしろ冷淡に近い受答えばかりしていた。
島田はかねて横風だという評判のある男であった。健三の兄や姉は単にそれだけでも彼を忌み嫌っている位であった。