Japanische Klassiker mit Furigana
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みちくさ
道草
Lesen Sie 道草 (みちくさ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.812 Zeichen · 293 Bildschirme
三十五
彼は健三の外国で着古した洋服を貰って、それを大事に着て毎日局へ出勤した。
三十五
二、三日経って健三の兄は果して細君の予想通り袴を返しに来た。
「どうも遅くなって御気の毒さま。有難う」
彼は腰板の上に双方の端を折返して小さく畳んだ袴を、風呂敷の中から出して細君の前に置いた。大の見栄坊で、ちょっとした包物を持つのも厭がった昔に比べると、今の兄は全く色気が抜けていた。その代り膏気もなかった。彼はぱさぱさした手で、汚れた風呂敷の隅を抓んで、それを鄭寧に折った。
「こりゃ好い袴だね。近頃拵えたの」
「いいえ。なかなかそんな勇気はありません。昔からあるんです」
細君は結婚のときこの袴を着けて勿体らしく坐った夫の姿を思いだした。遠い所で極簡略に行われたその結婚の式に兄は列席していなかった。
「へええ。そうかね。なるほどそういわれるとどこかで見たような気もするが、しかし昔のものはやっぱり丈夫なんだね。ちっとも敗んでいないじゃないか」
「滅多に穿かないんですもの。それでも一人でいるうちに能くそんな物を買う気になれたのね、あの人が。私今でも不思議だと思いますわ」
「あるいは婚礼の時に穿くつもりでわざわざ拵えたのかも知れないね」