Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
佃に腕をとられ、ゆるゆる石畳の広場を廻り歩きながら、伸子は考え考え口をききだした。
「これから云おうとするのは皆、私の我儘なのよ、妙な工合で後先になってしまったけれど。――でも大切なことだから、どうか聞いて頂戴。毎日の生活は、ただ可愛いというばかりで行かないことが、沢山あるから……ね」
「勿論そうです」
佃は熱心な調子で云った。
「何でも云って下さい。よく相談して、私は自分の力の及ぶ限りのことはします。この四五年、私は結婚ということなんかすっかり断念していた。――実に思いがけない――信じられないほどです。――今頃」
「私にしてもそれは同じよ。思いがけないわ。……でも、私――あなたのいらっしゃらないあいだ考えて、こう定めたのも、私どもの心に育ってるものを、まっすぐ伸して立派なものにしたいからなのよ。ただ旦那様と細君を作りたいからなんじゃあ本当になくってよ」
「それは解っています」
「お互が安心して、少しでも深みや広さの増した人間になりたい。若し心持の上で、故障なしにやって行けるものなら、私は一つ家に住むということや、他のいろんなことなんか、どうでもよいとさえ思います。