Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
伸子は、
「――どうなすって? おそかったわね」
と云った。彼から、お待ち遠でした、と云わせたいと思った。
「みんなお待ちかねよ」
佃は、二つの膝をかためるようにして座蒲団の上に坐り、テーブルの上を狭く見、不明瞭に、
「そう……一寸」
そして、父母の方だけ向いて挨拶した。
「失礼いたしました」
「いや。――どうですね、山崎さんの都合をきき合せましたか。今日倶楽部で偶然会ったから、また改めて話して置きましたよ」
……次第に食事は賑やかになった。仕舞い頃には、伸子を除いた誰もが、初めの一寸した心持の引懸りは忘れてしまった。しかし、このようなことは一度ですまなかった。次の日、一日隔いてまた次の日、その次の日、どういう都合か同じことが起った。じき消える淡い感じが、度かさなるにつれ明瞭になり、伸子にとって一種悩ましい予感のようになって来た。食事時になると、多計代は制えつけた苛立たしさで云った。
「佃さんには早めにお云いよ、いつまでもお客様みたいに皆を待たせないで」
「そうしましょう」
「――一体外国の大学なんかは、ひどく気さくな青年らしい気風だって云うじゃないか。あの人だって、ここへ来てお前の手伝いぐらいしてもよさそうなものだね、――二人の時でもこうなのかい?」