Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
彼女はぽっと耳朶まで赧くした。
「――駄目だよ! あの人は」
「どうして?」
「どうしてってお前……あの人はまるで冷淡だよ……ちっとも感激というもんがない人だ。どんな無学な者だって、こちらが真心を打ちわって話せば本気になって来るのに、あの人ったら何ていうのか――後じさりするばかりなんだもの。ただ自分は、お前のためにはどんなにでも尽す積りだ、自分は犠牲になる覚悟をしている、という一点張りなんだもの。――何も私はいきなりあの人に犠牲になって貰おうなんぞというのじゃありゃしない。気違いじゃあるまいし。――お前の身も立つように、またあの人も工合よく暮させたい、それには、と思って話し合おうとするのに、――問題にならないじゃないか」
母の気象と佃の性質と、両方知っている伸子には、これらの不満がよく理解された。母が、これほど自分は衷心から話しているのに! と、熱した心のやり場がなくて歯痒ゆがる心持は同情された。それかと云って、伸子には、決して佃が悪いとばかり思えなかった。彼女は中立的に、
「あのひと口下手だから……」
と云った。
「それに、私について話すと云ったって――誰しも一寸困るじゃあないの、何をどうするって云う、具体的な問題が今ある訳じゃないんだし……」