Japanische Klassiker mit Furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lesen Sie 伸子 (のぶこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.543 Zeichen · 466 Bildschirme
十
彼女の性質は単純で熱烈であったから、母から来る刺戟、佃から来る刺戟、各々に全心で反応した。あっちへ打つかって跳ねかえり、こっちへぶつかって跳ねかえり――伸子は落着いて仕事でもしたくなって来た。佃が帰朝して以来、ちっとも整理されない感動や経験が心の中にごたごた湧きかえっている。彼女はある日彼に云った。
「――私少し落着いて勉強したくなってきたわ」
「いいでしょう、おやりなさい」
「引越ししなけりゃならないわ、――でも」
「…………」
佃は疑わしげな、不安な顔付で伸子を眺めた。
「ああ、違うのよ、机だけ引越すのよ――ここ、お互に出入りが邪魔だから、元の部屋へ行きたいと思うの」
すると、佃は暫く黙っていたが、伸子の手をとり、訊きかえした。
「本当に勉強のためだけですか?」
「もちろんよ」
しかし、伸子はそのせつな、心の底の何処かを、微小な棒ふらのような疑問が閃き過ぎるのを感じた。――本当にそれだけかしらん?……伸子は一層快活そうに断言した。
「もちろん、だから手伝って下さる?」
「ああ、手伝って上げますとも」
もう二人ともセルを着ていた。彼らは伸子が、祖父譲りで使っている樫の机の両端をかいて、庭づたいに、客間の横手へ運んだ。